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アスベスト除去工事について

建物の解体工事には切り離せないアスベストの問題

2006年以前に建設された建物には、アスベスト問題は他人事ではありません。
アスベスト含有の建築物は、人々の身体に甚大な被害をもたらすことが言われて言います。

そこでアスベストについての基本から具体的な除去工事の流れまで詳しくご紹介します!

 

あなたの家は大丈夫?アスベストの危険性

 

 

 

ご所有の建物にアスベストが含まれているかもしれないと考えたことはありますか?

もしもあなたがその建物の解体工事を考えている場合、事前に含有の可能性を把握しておかなければ、後々のトラブルに繋がってしまう可能性もあります。

 

アスベスト(石綿)とは

 

 

耳にはするけれど、アスベストが何なのかよく知らない…という方は多いでしょう。

 

アスベストとは、日本語で石綿と呼ばれる無機繊維状鉱物のことを言います。

1970年~1990年の間に大量に輸入され、耐久・耐熱・耐薬品・電気絶縁などの性質から建材として重宝されていました。

当時安価での購入が可能であったため、一時は「奇跡の鉱物」とさえ呼ばれていました。

そのためアスベストは、建設資材のほかにも自動車用品、電気製品、家庭用品など、一時期は様々な用途に使用されていたのです。

 

アスベストに潜む危険性

 

そんな奇跡の鉱物とまで呼ばれていたアスベストですが、なぜ現在では使用が禁止されてしまっているのでしょうか。それには、アスベストにある発がん性が関係しています。

 

吸引によって引き起こされる人体への健康被害

 

アスベストはとても小さく、ある程度のレベルまで飛散しなければ目視することは難しいため、飛散しやすいにもかかわらず気づきにくいという恐ろしい性質を持っています。

アスベストの吸引により、悪性中皮腫や肺がん等の病気を引き起こすおそれがあります。

最初の吸引からおよそ15年~40年前後の潜伏期間を経て発症する可能性があることが発覚し、以降は使用が禁止されるようになったのです。

 

アスベスト吸引により起こるアスベスト肺

アスベストのばく露により、肺が線維化し塵肺という病気になることがあります。

塵肺はアスベストの他にも粉塵や薬品等により引き起こされることがありますが、アスベストが原因とみられるものは「アスベスト肺」もしくは「石綿肺」と呼ばれています。

アスベスト肺の主な症状は激しい咳などで、重症化してしまうと呼吸機能の低下などが起こり得ると言われています。

 

アスベスト含有の建物を放置していると…

 

「飛散しなければ大丈夫なんでしょ?今住んでいる家屋に使われているだけなら、何の問題もないんじゃ…」と思った方。それは大きな間違いです!

 

もしもアスベスト含有の建物をそのまま放置してしまうと、その建物が老朽化し破損・倒壊が起こった際、そこら中に大量のアスベストが飛散してしまいます。

通常、アスベストの処理は専門の業者による適切な処理が必要であり、正しく処分しなかったために飛散してしまった場合、所有者やそこに住む人々だけではなく、近隣の住民や多くの人々の健康を害する可能性があるのです。

 

何か起こってからでは手遅れになってしまいます。建物にアスベスト含有の可能性があった場合はすぐに調査し、適切に処理をしなくてはなりません。

 

アスベスト含有の可能性がある建築物

 

 

では、建築物のアスベスト含有の可能性はどのように確認することができるのでしょう。

ただ目で見ただけでは、アスベストが使用されているかどうかはわかりませんよね。

 

まず判断材料となるのは、建築物の築年数です。

アスベストは全国で広く使用されていくうち、段々規制が強まっていきました。

 

1975年にはアスベストの含有量が5%を超えるものの吹き付け作業の禁止。

1995年には含有量が1%を超えるものの吹き付け作業の禁止。

2004年には含有量が全体の重量の1%を満たさないクリソタイル(白石綿)以外の製造、輸入、提供、譲渡、使用の禁止。

そして2006年に、アスベストの含有量が重量の0.1%を超えるものの製造、輸入、提供、譲渡、使用が禁止されました。

こうして、アスベストは使用されなくなっていったのです。

 

つまり築年数が古ければ古いほどアスベストが使用されている可能性は高いと言えます。

 

利用されている可能性が高い箇所

 

 

建物にアスベストが使用されていると言っても、建物のすべてにまんべんなくアスベストが含まれているわけではありません。

建設された時期によっても変わりますが、アスベストが利用されている可能性が高い箇所はいくつかあり、その家屋によって使用されている箇所は異なります。

 

屋根

スレート瓦などはセメントと混ぜる形でアスベストが使用されており、老朽化によりアスベストが飛散するかは現在わかっていませんが、みだりに自分で処分することなどは禁止されています。

 

外壁

サイディング外壁(※塗り壁ではなく、外装材を貼るタイプの外壁)や波板には、屋根同様アスベストが高い確率で含まれています。

 

内装材

ケイ酸カルシウム板やパーライト板等の内装材にもアスベストが含まれている事が多いです。

 

断熱材

配管・ダクトに巻かれた断熱材は、保温性に優れているためアスベストを使用していることが多くあります。

 

吹付け材

耐火材として利用された吹付け材も、性質を活かし使用されていることが多いです。

 

あなたの家は大丈夫?アスベスト有無をチェック

ご所有の建築物のアスベスト含有か否かをチェックするには、以下の方法があります。

 

 

 

設計図書等で竣工年を確認する

建築時の設計図書等を確認することにより、吹き付け作業が行われた時期を確認することができ、その竣工年からアスベスト使用の可能性をある程度判断することができます。

 

例えば、昭和30年~50年の間には吸音や耐火被覆用に約60%~70%の吹付け石綿が使用されている可能性があります。これは、先述のとおりこの時期の建築材料として多く使われていたことから考えられます。

また、昭和45年~昭和63年頃にかけては石綿含有の吹付けロックウールが使用されている可能性が高く、その場合の含有率は1%~30%ほどです。

 

この時期に竣工されていたとしても、アスベストが含まれていない建築物である可能性も大いにありますので、あくまで目安として考えるといいでしょう。

 

図面等で建材の商品名を確認する

建築士等に図面をもらい、使用されている建材の商品名を確認することができます。

商品名を確認できたら、国土交通省・経済産業省や日本石綿協会などでアスベスト含有建材の商品名が公表されていますので、照らし合わせて確認することができます。

 

また、製造年によって含有量が異なりますので、商品名とあわせて製造年も確認すると良いでしょう。

 

チェックした結果、アスベスト含有の可能性が高い建築物、もしくは可能性がある建築物であった場合には、専門の調査機関に適切な分析調査を依頼しましょう。

 

3つのレベルに分けられるアスベストの適切な処理

 

アスベストを処理する際、処理の方法によって発塵量は異なるため、作業内容によって近隣へ影響を及ぼしやすく、危険性の高いものを3つにレベル分けして処理を行います。

各レベルにより飛散対策や作業内容は異なります。それぞれの内容を見てみましょう。

 

レベル1/発塵性が非常に高い

処理作業の中で最も発塵性が高く、危険性が高いとされている作業は、アスベスト含有吹付け材の処理です。アスベストとセメントを混ぜ合わせている吹付け材は、固まると綿のような状態になり、撤去する際に大量の粉末が発生してしまいます。この粉末のアスベスト濃度は高く、吸引による健康被害が予想されます。

 

主に耐火建築物の柱や梁、エレベーターの周辺、立体駐車場や体育館などの施設の天井や壁などに使用されていることが多いです。

 

対象となる工事と作業内容

吹付け材の除去作業は解体工事の際は建材自体の除去作業となり、改修工事の際は薬液による飛散防止の封じ込め工法、板状の材料を使用して密閉する囲い込み工法となります。

 

除去作業の際は事前にアスベスト除去工事の看板を掲示して周知を徹底すると共に、作業場の清掃や、前室や負圧除塵機を設置などで飛散を防止しなければなりません。

更に、作業員への影響も考え、保護具の装着が義務付けられているほか、作業員は作業にあたり必ず特別教育を受けることになっています。

 

レベル2/発塵性が高い

アスベスト含有の保温材、耐火被覆材、断熱材の処理作業が、レベル2に当ります。

シート上に巻きつけられ壁や天井に接着されているわけではありませんが、除去作業にはアスベストの飛散が予想されるため、適切な対策が必要とされています。

 

対象となる工事と作業内容

保温材、耐火被覆材、断熱材などの建材の除去と、レベル1に同じく封じ込め・囲い込みの作業を行います。

 

レベル2に該当する処理もまた、発塵しやすい製品の除去作業なたまえ、レベル1に準じる防止対策が必要とされています。

処理の際、建材を湿らせて飛散しにくくする湿潤化作業も必ず行わなくてはいけません。

 

レベル3/発塵性が比較的低い

レベル1、レベル2に当てはまらない成形板等のアスベスト含有建材は、発塵性が比較的低い作業とされています。建物の天井・壁・床などにアスベスト含有の成形板、ビニル床タイル等を貼り付けている場合と、屋根材として石綿スレート等を用いている場合などがレベル3に当てはまる除去作業となります。

 

対象となる工事と作業内容

 

この際の除去作業は、ほとんど手作業で剥がして除去していく作業となります。

レベル1・レベル2では各届出が必要となりますが、レベル3の工事の際は不要です。

 

飛散対策として、近隣への周知・建材の湿潤化は必須となりますが、隔離養生・前室設置の必要はありません。また、作業員の保護具もレベル1、2とレベル3では異なり、レベル3では比較的簡易的な保護服を使用しての作業となります。

 

アスベスト含有建築物の解体工事の流れ

 

 

具体的にアスベスト含有の建物を解体する際、どのような流れで工事を行うのでしょう。

今回は、作業レベル1の工事を例として、解体工事の様子を見ていきましょう。

 

事前準備作業

工事を始める前に建築物の分析調査を行い、結果の保管をする事が必要とされています。

そのほかにも、法令にのっとった届出の提出、近隣への周知など、除去工事より前に行うべき作業はいくつかあります。

 

①各種作業届提出

レベル1の作業に必要な提出物として、工事計画届出、特定粉じん排出等作業届出書、建築物解体等作業届があります。

工事計画届出は労働基準監督署長宛に、特定粉じん排出等作業届出書は各都道府県知事宛に、それぞれ作業の14日前までの提出が必要とされています。建築物解体等作業届は、作業開始までに労働基準監督署長宛に提出となります。

 

いずれも作業を行う施工業者に提出が求められるものであり、施主が提出すべきものは、アスベストに関する書類については特にありません。

 

②看板設置・足場組立・事前清掃

近隣への周知のため、事前に工事概要を記した看板を設置します。近隣住民から見やすい位置に、わかりやすく設置しなければなりません。立ち入り禁止の掲示・飲食喫煙禁止の掲示・有害性の掲示等も必要となります。

また、作業の足場の組み立て、事前に作業場を清掃するなどの作業も除去工事以前に行いますが、清掃は作業のあいだ毎日行わなくてはいけません。

 

③作業場所の隔離・密閉養生

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アスベストの飛散を完全に防ぐためには、隔離養生の設置が必須です。

 

このとき使用される養生シートはPETシートと呼ばれ、ペットボトルと同材料で作られています。そのため、丈夫で破れにくく、安全性が高く隔離・密閉しての作業が行えます。

 

アスベスト除去工事

事前の準備が完全に済んだら、いよいよ除去工事を行います。

作業場を隔離養生したとはいえ、作業中も十分な飛散対策を行う必要があります。

 

 

①粉塵飛散抑制剤の散布

除去工事を行う前に、アスベストの飛散を防ぐ抑制剤の散布をします。

この時散布する抑制剤には、人体への被害がなく、保護具に付着しても簡単に拭き取ることができるため、主に水ガラスを主成分とする無機系薬剤が使用されます。

 

②アスベストの除去

アスベスト含有の建材の掻き落とし・切断・破砕による除去作業を行います。

この時作業員への影響も考慮し、エアラインマスク・電動ファン付きマスク・全面形防塵マスクなどの保護具や、使い捨てできる保護衣・作業衣の使用が義務付けられています。

 

③除去石綿減容化・袋詰作業

除去したアスベストを廃棄物として処理するため、前処理してから真空圧縮し、アスベストの容積を50%~70%に縮小させ、処分しやすくします。こうすることで、廃棄物処理のコストをおさえることもできます。

アスベストを廃棄する際は、くれぐれも飛散しないよう丁寧な処理を行います。

 

④使用器具等の付着物の除去

除去自体が終了した後は、器具の搬出の際に付着した有害物質が飛散してしまわないよう、丁寧な除去作業を行います。作業員の使用した保護具にも適正な処理が必要となりますが、特に作業衣は作業ごとの使い捨てが必要となります。

 

除去工事後の作業

仮設物等の撤去・仕上げ清掃

工事が終了したら、休憩室、洗顔・洗身・うがい設備、更衣室、洗濯設備等の仮設物の撤去作業を行います。

作業場の清掃は作業の内容に関わらず毎日行う必要がありますが、隔離養生を撤去する際にはより丁寧な清掃作業が必要となり、撤去によりアスベストの飛散がないよう注意しながら行います。

 

 

最終処分場への運搬・処分

アスベストを適正に処分するため、最終処分場への運搬、処分を行います。

処理を廃棄物処理業者に委託する場合、処理委託契約の締結、マニフェストの管理などを徹底することが廃棄物処理法により定められています。

 

アスベストの処分には有害物質が発生するため、必ず適切な処分を行わなくてはなりません。野焼き処分、不法投棄は絶対にあってはならないのです。

信頼できる業者を選択する為、業者にマニフェストを確認させてもらうことも大切です。

 

まとめ

アスベスト含有の建築物は、その建物の所有者や利用者のみならず、多くの人々の健康に害を及ぼしてしまう可能性が大いにあります。

だからこそ、早めに適切な除去・解体工事を行うことが必要なのです。

 

含有のおそれのある建物を解体する際、業者にはその可能性を事前に相談しておくと、後のトラブルや追加費用の発生を防ぐことができますよ。

心配になったら、まずは各自治体に相談し、専門の機関に分析調査を依頼しましょう。

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